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2012年07月25日
「夢の光」 田村彰英写真展

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                            ▲シリーズ (新BACE)より 「厚木」 2009年
●会  期 2012年7月21日~9月23日(日曜)まで 10:00-18:00(木・金は20:00)月曜休館
●会  場 東京都写真美術館 恵比寿ガーデンプレイス内 Tel: 03-3280-0099
●観覧料 一般600円、学生500円、中高生・65歳以上400円
▼「夢の光」に寄せて……田村彰英
 
われわれは、自分たちの欠陥や弱さのゆえにではなく、自分たちの幻影のゆえに苦しんでいるのである。われわれは現実ではなく、現実のかわりに置き換えたイメージにとりつかれている

                     ダニエル・J.ブーアスティン 『幻影の時代』 (東京創元社 1964年)
初心
 私が、子供だった頃、アメリカは憧れの国だった。
 テレビドラマの西部劇や、黄金の50年代、ホームドラマが輝いていた時代。アメリカに対する憧れは増すばかりであった。飛行機が好きだったので、BACE YOKOTA や ATSUGI、YOKOSUKA の存在を、飛行機の雑誌から知ることとなった。
 東京西部の武蔵野の雑木林と麦畑に囲まれた広大な、YOKOTA BACE の白いフェンスと、緑の芝生のアメリカの町と、滑走路の逃げ水に浮かぶ戦闘機のある空間が不思議に思えた。
 航空雑誌を見て、4×5カメラとコダックのエクタクロームで撮影された美しい描写に魅了され、いつかカメラマンになりたいと思った。近くの写真学校に通い始め、さらにBACEへの関心が深まった。
 写真教育の中で、BACEが米ソ核戦略の緊張感の狭間に存在することを知った。あまりにも美しく、不条理な戦闘機を目の前にして、私の気持ちはゆさぶられた。核のボタンで、一瞬に世界が消えてしまう恐怖と、エキゾチックで不思議な憧れというBACEの矛盾が、私の心を揺らしたのだ。
困難な時代
 東日本大震災、原発事故など歴史上まれに見る困難な時代にプロ写真家として、すべての写真をつくる人の意識として、無意識として、現実の情況を考えざるを得ないと私は思っている。本来、写真とは速報性、報道性を内包した芸術であると思う。
 写真とは自分の心を写す鏡であり、自分が社会を見るための窓である
                          (John Szarkowsky,Mirrors and Windows, MoMA,1978)
 ニューヨーク近代美術館の写真部門ディレクターだった故ジョン・シャーコフスキイ氏の名言を思い出す。このことばは、今回の写真展のテーマでもある。現代の高度管理社会では、テーマ、主題、思想は、写真という表現手段を使い、いかに生きていくか、正しく生きていくかの方法を見届けるための芸術手段であると思うからである。私は心のなかの混乱と矛盾の暗黒のかなたの光明(夢の光)を探しつづけている。
輝ける誤解をめざして
 暗黒のかなたの光明とは……。私の作品「家」のなかの落雷の光、「BACE」の逃げ水に浮かぶ戦闘機の輝き、被災地に降り注ぐ光、福島第1原発の瓦礫に降り注ぐ光に対する焦燥感かもしれない。困難と混乱のまま、なにも解決できない苛立ちの感情を今回の写真展で表現したかった。
                                           (たむら あきひで / 写真家)

投稿者 ips_kanri : 10:56
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