▲写真 齊藤 陽道 「せかいさがし」より 2010年/2018年
●会 期 2019.11.30~2020.1.26(日曜)まで
●会 場 東京都写真美術館 恵比寿ガーデンプレイス内 Tel: 03-3280-0099
●観覧料 一般700円 学生600円 中高生・65歳以上500円
■展示作家……作家ステートメントより抜粋
●●●藤安 淳 Fujiyasu Jun
いままで双子として生きてきたことで向き合わざるを得ないいくつかの問いに改めて直面した。一つは、自身が双子であることを意識する必要があるのか、また一つは、自分と顔が似た存在が、知らないうちに自分として認識され、扱われている世界があることへの恐怖感とどう対峙すべきか。さらには、第三者から幾度となく見比べられるようなまなざしに晒されるなかで、自分の「個」としてのアイデンティティをどのように確立すべきか。
●●●井上 佐由紀 Inoue Sayuki
終わりに向かう祖父の目を見ながら、ふとはじめて光を見る赤子の目を見たいと思うようになった。それから私は30名以上の出産に立ち会い、赤子の目を撮り続けている。
いつかなにも見えなくなるときがきっとくる。 そのときまで、私は新しい光を見たい。
●●●斎藤 陽道 Saito Harumichi
逃れ得ないこの身体、この国、この時代。ここから動けない、それでも、進んでいく、進んでいる。どこへ、内側の奥へ。底へ。底へ。外見上ではなにも変わらないようでいても、その裡では、生老病死に染まりながら、あきらめても、あきらめきれず、それでもなんでかあの果てへと深化していくものがある。
たった一人のおこないが、なんという大勢へと繋がりうるのは、なんという大勢のひとりずつの内側にも「深化するもの」を抱えているからではないか。深化する感動あればこそ、まだ見えざる世界をそれでもなお明るく望もうとする一個人の願いが、光を放ち、無辺へと受け継がれていく。そう信じている。
●●●相川 勝 Aikawa Masaru
スマートフォンで撮影するとき、撮影者はカメラのアイコンを選択して撮影し、スワイプやビンチをしてトリミングをし、フィルターをかけるなど疑似暗室作業を繰り返しイメージを形作っていく。
私はプロジェクターやスマートフォンの光を用いて撮影する。それは私も同じようにカメラを使用となく、デバイスにアクセスする行為のみで撮影をしているといえる。私の作品では被写体が実在しないものが多い。被写体が実在するかなどはたいした問題ではない。なぜならば、私たちは他者がつくりだしたイメージのなかで生活しているからである。
●●●濱田 祐史 Hamada Yuji
2011年3月11日、東日本大震災が起こった。震災後の情報の不確かさに揺れた日常のなかで、メディアから私たちが受信している情報と、目の前にある現実のギャップを感じていた。
しばらくして、山の写真のポストカードが届いた。それを見たとき、美しい山だと思ったと同時に、どこか偽物に見えたことから「写真における山のイメージはわれわれのなかにそれぞれあって、見た人によって想起するイメージは異なるのではないか」と考えた。
作り手の主観で完結する山ではなく、見る人の頭の中に”最初に浮かび上がった山”という意味をこめて、タイトルは「Primal Mountain」と名付けた。
●●●八木 良太 Yagi Lyota
ひとつのものを見るとき、隣人が同じものを見ていても、同じように見えているわけではない。立体視や、錯覚に関する作品をつくるうちに、そう感じることが多くなってきた。
一般的に、鑑賞者は製作者の見ているものを見ようとする。そういった関係を反転させてみたかったので、特定の色覚を持つ人だけに見える、色覚検査表のパターンを応用して作品を制作してみた。そうすることで、私には見えないものを提示できると思った。赤緑色覚異常のある人は、青色のグラデーションの差を、健常者と呼ばれる人たちより微細に見分けることができるということだ。私には見えない。ずっと豊かな空や海の青を想像すると楽しくなってきた。